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こちらはいわゆる仕事用のもの.

卒業論文をこれから書くLaTeX初心者が最低限守るべきLaTeXのルール(改行・改ページ編)

いよいよ,卒論の追い込みの時期が近づいてきて, LaTeXに関わる質問を受けることが多くなりました.

普段からLaTeXを使ってる人にとっては何事もないような事柄ですが, 幾つかのコマンドを初心者が誤用している例がたくさん見られる項目があります.なので,これを機にまとめておこうと思います.

思いついた順につらつら書き足す感じでやっていきます.

内輪以外の人も少しでも参考になればいいと言った具合です.

強制改行は基本使わない.

LaTeXで文章を書くときに初心者にめちゃくちゃ多いのが,「改行のやり方が間違っている」というものです.

「すべての改行を強制改行 "\\"で行う. 」はコマンド誤用の定番中の定番です.

その例がこちら.

この文で第1段落を始めます. この文で第1段落を閉じます.
\\この文で第2段落を始めます. この文で第2段落を閉じます.

f:id:mblogit:20161207114046p:plain

この場合,一見うまく改行ができているように思いますが,第2段落の初めの部分でインテンド(字下げ)が効いていません.

このように,段落を変えるための改行は以下のように,空行を1行挟むことによって改行します.

この文で第1段落を始めます. この文で第1段落を閉じます.

この文で第2段落を始めます. この文で第2段落を閉じます.

f:id:mblogit:20161207114047p:plain

このようにすれば,改行と同時に字下げも行われるので,こちらの方法で改行は行います.

図表の中での改行では強制改行を行うことは,ままありますが,地の文で強制改行を使うことは基本的にありません.

段落の先頭に "\quad" とかやらない.

上の強制改行を使いかつ,段落の初めに字下げのために段落初めに"\quad"とか"\qquad"を挿してくるのが定番の間違ってるパターンです.

この文で第1段落を始めます. この文で第1段落を閉じます.
\\\quad この文で第2段落を始めます. この文で第2段落を閉じます.

この方法でコンパイルすると以下のような出力を得ます.

f:id:mblogit:20161207120944p:plain

この方法ですべて解決できているかのようにも見えますが,よく見ると第1段落と第2段落のインテンドの幅が異なっていて,第2段落が必要以上に下げられてしまっています.

このような体裁は文の量が増えれば増えるほど,悪目立ちします. 正しい方法で書いている人にとってはとても違和感を感じるものです.

これに関しても前の部分で説明した,「1行挟む」方法を用いればすべて解決します.

改ページをコマンド1つで行う

改行についで,誤用が多いと思われるのは「改ページ」に関するものです.

よくある例は,

この文で1ページ目を終えます.
\hspace{**cm}
この文で2ページ目を始めます.

という具合に,\hspace{} で改ページされるまで,長さを手動でひたすら調整し続けるというもの. (horizontal space の略,**cm鉛直方向にスペースを取る.)

個人的な経験では,学参書で問題文の後ろにスペースを空けるときに使ったりするようなものなので,少なくとも改ページには使うべきではないです.

(枚数制限がある原稿とかで,少しでもスペースを詰める場合に**に負の値を入れて,詰めるみたいなこともやるけど,まぁこれは今回はいいや.)

これならまだしも,本当に最悪なのは強制改行連打でごり押しをキメてくるものです.

この文で1ページ目を終えます.
\\
\\
\\
\\
\\
\\
\\
\\
この文で2ページ目を始めます.

さすがに,これが正しいと思って,書いてる人はいないとは思いますが,方法がわからず仕方無くこれに走る... という人をたまに見かけます.

これらの方法で一見解決できてる(特に\hspace{} の場合は) ように見えますが,いずれの場合も,地の文に続いて,文中に余白や空行を書き足してる扱いなので,正式な改ページではありません.

この方法の場合,途中で前ページに新しい内容を加筆するとその分,余白や空行が押し出しを受ける形になり,2ページ目に謎の余白ができる→その余白を消すために,**cmや行数を地味に調節する.と言ったスパイラルに確実に陥ります.

レポート程度ならこれでも対応出来るかもしれませんが,複数ページに及ぶ卒業論文のようなもので,加筆するたびにこの作業に追われると思うと,もはや地獄です.

ここでも,LaTeXにはあらかじめ有用なコマンドが用意されています.

この文で1ページ目を終えます.
\newpage
この文で2ページ目を始めます.
この文で1ページ目を終えます.
\clearpage
この文で2ページ目を始めます.

の2つです.

\newpage の方はシンプルにソースに書いてある部分で改ページを行ってくれます.

\clearpageの方はそれまでに挿入された図表(正確には浮動体)をすべて出力してから改ページを行うというものです.

したがって,\clearpage を使うと,図表が本文からものすごくずれる,といった症状が比較的起こりにくくなります.